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英語から日本語への誤訳あれこれ 「人の訳見てわが訳直せ」
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ユーザテストはエンターテイメントではない--(その1)

久しぶりにJakob Nielsen's Alertbox を読みました。私の好きなサイトの1つで、日本語版ができる前から読んでいましたが、いろいろ取り紛れてしばらく遠ざかっていました。今回読んだのは、2006年9月11日付のコラムです。


実は日本語版から先に読んだのは今回が初めてなのですが、読み始めると最初の要約の後、「気がかりな傾向がある」(I'm seeing a disturbing trend in which…)と始まる段落で、早速ひっかかってしまいました。


誠意を持ってそうしている人たちは、よく知られるユーザビリティの問題点をクライアントに見せて、強く印象づけたいと考えている。そうすれば、デザインの改善に向けて支援を得られると考えているからだ。


「気がかりな傾向」の話を始めたはずなのに、「誠意を持ってそうしている」とは、どういうことでしょうか? 言葉のかみ合わせが悪く、少々混乱してしまいます。原文を見てみましょう。


The people running such studies have the best of intentions: they want to show their clients well-known usability problems in a captivating way, and thereby gain support for design improvements.


「The people は、the best of intentions を持っている」が文の主題で、コロンの後ろがその補足説明という構造です。such studies とは、筆者が「気がかりな傾向」としている、ショー的イベントに傾いた調査のことを指します。あと細かいところですが、コロンの後ろは
they want to
(1) show… , and thereby (2) gain…
という構造だと思います。まだgain support が確定しているわけではないためです。現段階では願望と解釈するのが自然でしょう。


ともかくこの文の主旨は、「調査がショー化するのにもそれなりの(善意に基づいた)意図がある」ということです。文意からすると筆者が一定の理解を示しているトーンにも受け取れます。ところが引用の訳文はそこで「誠意を持ってそうしている人たちは」と、いきなり新しい情報から始めてしまっているため、話のつながりが分かりにくくなっています。この文では「誠意を持っている」そのことがまさに説明されないといけないのに、それがいきなり無前提に登場するので、読む側としては面食らってしまうわけです。



以上をふまえて、こんな風に訳しました。


もっとも調査担当者にしてみれば、クライアントに対してよく知られたユーザビリティ上の問題点を強く印象づけてデザイン改善への支援を得ようという意図があるわけで、特に悪意があってのことではない。



原文のニュアンスにここまでの筆者の評価が入っているかという疑問はありますが、前後の文とのつながりを考えると、こんなところでしょうか。



日本語版へのリンク 原文へのリンク


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