英日 誤訳どんぶり

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イディオムの幻影―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その15)

引き続き「社会劇場――人は役割を演じている」からです。2つあります。(下線はやしろ)



1つめです。1つ前の文章から引用します

新興のハイテク企業を訪れる場合、こうした若い会社には敬意と品行というあらたまったルールなどなさそうだという印象をしばしば持つものだ。しかし、実のところ、彼らは変わっているだけである。 (p.056)

「しかし、」以降の原文です。

…; but, in fact, they are just different. (p.26)

「変わっている」というと、「奇妙」「おかしい」と取られそうなので、少し補足してこうしてみました。


しかし実際は、その現れ方が違っているだけである。



2つめです。こちらが今回のメインです。1つめに続く文からです。


そうした会社の一つを覚えているが、同社はステータスに関して何度も本気で取り組んでいた。 (p.056)
I remember one such company in which status was communicated by the number of times one could roll up one's shirtsleeves. (p.26)

イディオムを読めずに文字づらどおりに訳してしまう誤訳はよくありますが、これは逆のパターンで、イディオムでないものをイディオムのように訳している例です。個人的には遭遇するのが珍しいパターンで、新鮮です。


確かに「roll [turn] up one's (shirt) sleeves」で「シャツの袖をまくりあげる,腕まくりする《仕事・けんかの用意》」(リーダーズ英和辞典)となり、そこから「本気で取り組んで」という訳語が出てきたのでしょうが、ここは慣用句的にではなくて字づらどおりそのまま読めば通じます。こうです。


そうした会社の一つを覚えているが、その会社ではシャツの袖を巻き上げる回数で地位を表していた。


柔道や空手では帯の色で段位を表すように、その会社ではシャツの袖の折り返しの数で地位の上下を示していた、という話です。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)



| 原文解釈の誤り | 08:05 | comments(2) | trackbacks(0) |
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コメント
楽しいブログありがとうございます。

they are just different.

翻訳した人は”they”が”rules”を指すことを見落としたのでしょう。日本語らしくするなら以下のようになるかと思います。

ルールが違うだけである。

I remember one such company in which status was communicated by the number of times one could roll up one's shirtsleeves.

ここはいくつか候補があると思います。

1.袖を捲り上げるときに折り返せる回数あるいは袖の短さ

しかし、それなら“the number of times one could fold”または“how short”と書くのが明瞭でした。

2.袖を捲り上げられるsituationsの回数

会議、来客、昼食などのsituationsのうち何回袖を捲り上げていられるかです。しかし、それなら”the number of situations” と書くのが明瞭でした。

他にもあるかもしれません。自身がないので私が翻訳担当なら著者に問い合せます。

突然現われて偉そうに講釈垂れて面食らわれているかもしれません。どんな仕事でもそうですが、先の人の寄与が9で後の人の寄与が1でも、後の人の仕事が上手そうに見えてしまいます。
| あしるぎ | 2010/04/25 2:20 PM |
あしるぎ様
コメントありがとうございます。
いずれも自分の思いつかなかった読み方なので、わからなくなってきました。
| やしろ | 2010/04/25 10:39 PM |
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