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毎度細かすぎるお話で―『天才!』エピローグ(その1)

エピローグ「ジャマイカの物語」に入ります。毎度のことながら、細かい話ばかり連ねます。6つあります。(下線はやしろ)



1つめです。


母とフェイスがヘアウッドをあとにしてセント・ヒルダズに進学したのは、祖母の勧めだった。 (p.309)
The fact that my mother and her sister left Harewood for Saint Hilda's was my grandmother's doing. (p.274)

doing なので、祖母は勧めただけではなくて実現に向けて動いていますね。訳語は「計らい」といったところでしょうか。



2つめです。


「娘たちをどうしたいのか、そのころの母に訊ねたとしたら、きっと『あの場所から外へ出したい』って答えたでしょうね」。私の母が回想する。 (p.309)
"If you'd asked her about her goals for her children, she would have said she wanted us out of there," my mother recalls. (p.274)

かぎかっこの中に入れて直接話法にするのであれば、「この場所」ですね。「あの」だったら当時親子は別居していたことになってしまいます。



3つめです。ジャマイカのある奨学金制度の話です。


そして、その年は狃子瓩受け取る番であり、フェイスが選ばれたのである。 (p.310)
The year my aunt applied was one of the "girl" years. (p.275)

「フェイスが選ばれた」ことは事実ですが、書いてあるとおりなら、こうですね。


そしてフェイスが応募した年は、狃子瓩受け取る番だった。



4つめです。


だが、デイジーは優しく、誰からも愛されており、母は彼にとってそのような敵意の中のオアシスだった。ミスター・チャンスはそんな祖母に恩を感じていたのかもしれない。 (p.311)
Daisy was a kindly and beloved figure, an oasis amid that hostility. Mr.Chance may have felt in her debt. (p.276)

訳文の「デイジー」「母」「祖母」は、全部同じ人物のことです。「デイジー」はグラッドウェル氏本人から見れば「祖母」、グラッドウェル氏の母からは「母」ですが、少なくとも、地の文での「母」と「祖母」の混在はいただけません。校正でも見過ごされてしまったのが実状でしょうか。


原文にない「母は」をカットすれば誤解がなくなるかと思います。もっと言えば、同じく「彼にとって」も特に補足しなくていいかなという気もします。



5つめです。


だが忘れてならないのは、フォード家が踏み出した絶え間ない上昇の道が、事実上、複雑な行為からはじまったことだ。 (p.317)
But it is important to remember that the steady upward path upon which the Fords embarked began with a morally complicated act: (p.281)

その訳語も辞書にはありますが、ここは「道義的に」でしょうね。直後で描かれているように、買った奴隷との間に子供をもうけて、一族の歴史が始まったからです。



6つめです。


 ウィリアム・シスルウッド――前述した、性的搾取を日記に書き連ねたプランテーションの所有者は、… (p.318)
Thomas Thistlewood, the plantation owner who cataloged his sexual exploits, … (p.282)

「トーマス」・シスルウッドですね。



日本語訳:天才! 成功する人々の法則 原文:Outliers (Amazon.co.jp)



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