英日 誤訳どんぶり

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as もややこしい―『天才!』第8章(その1)

第八章「『水田』と『数学テスト』の関係」に入ります。手始めに、as に関して2つです。(下線はやしろ)



1つめです。


有史以前から、アジアの農民たちは、来る年も来る年も… (p.257)
Year in, year out, as far back as history is recorded, farmers from across Asia … (p.225)


as 〜 as なので、直訳で「歴史が記録されているのと同じぐらいに遠くにさかのぼって」という意味ですから、「有史以来」ってところですね。少し前にも、米中会議でのオバマ大統領のスピーチのas important as を、日本の通信社が「どの2国間関係よりも重要」と誤訳した、とかいった話がありました。as 〜 as にはそんな魔力でもあるのでしょうか。



2つめです。


さらに言えば、このいわゆる倏甘敞廰瓩呂Δ泙排水ができ、それでいて適切な水量が保たれるよう、細心の注意で整備されなければならない。 (p.25)
And the claypan, as it's called, has to be carefully engineered so that it will drain properly and also keep the plants submerged at the optimum level. (p.226)


このas は様態を意味しますので、正確には「それが呼ばれているとおりに」→「その名が示すように」という意味です。ただ、好意的に見れば、やむなく「いわゆる」へずらしたのかなとも受け取れます。


というのは、ここのロジックはclaypan という英単語に拠る比率が高いので、英語のまま読めば意味明瞭ですんなり読めますが、日本語に移すと意味が通じにくいためです。そこが難しいところです。どういうことか、以下に説明します。


pan というのは、元々平鍋の意味です。フライパンのパンですね。土地に使うときは、「パンのような形の土地」ということですから、「窪地」というような訳語になります。


そしてpan には「パン1杯の分量」という意味もあります。ですので土地に使うとき、このような意味も含まれます。以下、COD のpan の項からです。


a hollow in the ground in which water collects or in which a deposit of salt remains after evaporation.(中に水がたまったり、蒸発した後に塩が残ったりするような地面の窪み)


英語の話者がpan というときには、形状とともにその中身も想起されるということのようです。


本書の話に戻ると、英語の話者はpan に関してそういう基本認識が出来上がっているので、as it's called に続くclaypan の記述を読むと、なるほどねと思うのでしょう。しかし日本語では、「粘土盤」にしても「窪地」にしても、材質や形状を言っているだけで、その場所を占める中身を連想させるようなニュアンスはありません。そこが難しいところです。(ただ、さんずいが入っていることからも分かるように、元来「窪」の字には「水のたまる」という意味があるようです。よくできた字だと思います)


難しいところですが、なんとか対案をひねり出してみました。元の訳よりもずれ具合がひどくなっている気もしますが、こんなもんでしょうか。


粘土質のこの窪地は、適度に水はけがよく、なおかつ、鍋のように適切な水量が保てるよう、細心の注意で整備されなければならない。



原文の最後のところは要するに、稲が「ひたひたのいい感じに浸かっている」状態ってことなんですが、そこまで言うとやりすぎかなと思えて反映は諦めました。言い回しも鍋っぽいのでうまく使いたかったのですけれど。



日本語訳:天才! 成功する人々の法則 原文:Outliers (Amazon.co.jp)


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