英日 誤訳どんぶり

英語から日本語への誤訳あれこれ 「人の訳見てわが訳直せ」
<< 再開します | main | しょっぱなから違う―『人生に必要な荷物 いらない荷物』第四章(その2) >>
スポンサーサイト

一定期間更新がないため広告を表示しています

| - | | - | - |
ルソーはもう高校生?―『人生に必要な荷物 いらない荷物』第四章(その1)
■第四章「人間関係の荷物を解く」

久々のシリーズ再開です。私自身も半ば忘れてしまっているので、いろいろ思い出しながら進めていきます。


『人生に必要な荷物 いらない荷物』(サンマーク文庫)の第四章からでした。章の中で7,8と二分されています。前半の7「誰と一緒に旅したいか?」から見ていきます。(下線はやしろ)



リハビリ?も兼ねて、最初の方から小ネタを4つ集めました。



1つめ、冒頭に掲げられている文句からです。


「孤独ほどよい同伴者はいない」
ルソー (p.154)

I never found the companion that was so comparisonable as solitude.
--Henry David Thoreau. (p.117)


「ソロー」ですね。『森の生活』にある言葉のようです。本書ではたびたび「ルソー」に間違えています。訳者の方は区別がついていないようですね。



2つめ、デイブの述懐からです。


高校生の頃、 (p.157)

When I was in Junior High, (p.119)


「中学生」ですね。



3つめ、「自分に栄養を与えてくれる人」の話題からです。



会うと彼らの目はパッと輝き、彼らがいてくれるからこそ、抱えた荷物も軽くなるのだ。 (p.158)

Whose eyes light up when they see us and whose presence lightens our mood, too. (p.119)


「気分」ですね。いくら本書のキーワードだからって、そこまで荷物を前面に出さなくてもいいでしょう。



4つめ、これは翻訳の問題ではありませんが。


…何百万もの人々が、きら星のごとく現れて自分の心をさらってくれる恋人に恋焦がれているようである。 (p.156)

… millions and millions of people are longing for a soulmate who'll sweep into their lives and sweep them away emotionally. (p.119)


何世代か後には違和感を感じる人もいなくなっているのかもしれませんが(既にそうなっている?)、ここで「きら星のごとく」を使うのは誤用です。この語句の区切りは「きら星/のごとく」ではなく、「きら/星のごとく」だからです。「きらきらぼし」という童謡はあっても、「きら星」などという星は存在しないのです。


「きら」は、漢字では「綺羅」と書きます。広辞苑の語義を借りて述べると「あやぎぬとうすぎぬ」、つまり「美しい衣服」のことです。ここから「外見の美しさ。はなやかさ。」や「栄華。威光。」という意味が生まれました。ですから、「きら星のごとく」とは、「美しさ/はなやかさ/栄華/威光が星のようだ」という比喩であって、原文の動詞の sweep とはニュアンスがまったく合いません。



そういえば会社勤めをしていた頃、社内向けに配信されていたメールマガジンに「きら星を探せ」というコーナーがあったのを思い出しました。隔週のペースで、毎回毎回同じタイトルが付いていました。恥ずかしい間違いなのに、誰も指摘しないんだなーと、ひとり思っていた記憶があります。かくいう私も指摘しなかったわけですが、何年も経ってこんなところで書いてしまいました。



ということで、星のたとえでいくなら「彗星のごとく」ぐらいが、(少し大げさな気はしますが)穏当なところでしょうか。


「ためになったねぇ〜 ためになったよ〜」
もう中学生のキメぜりふでしめくくってみました。



日本語訳:人生に必要な荷物 いらない荷物 原文:Repacking Your Bags: Lighten Your Load for the Rest of Your Life (Amazon.co.jp)


| 微妙に不正確 | 08:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
スポンサーサイト
| - | 08:23 | - | - |
コメント
コメントする









この記事のトラックバックURL
http://goyaku.jugem.jp/trackback/253
トラックバック
CALENDAR
S M T W T F S
     12
3456789
10111213141516
17181920212223
24252627282930
<< September 2017 >>
PROFILE/CONTACT
CATEGORIES
これまでのシリーズ
※それぞれ、第1回目の記事へのリンクです。
シャイン『人を助けるとはどういうことか』(全129回)
Chapter 9(7)|Chapter 8(17)|Chapter 7(17)|Chapter 6(8)|Chapter 5(11)|Chapter 4(17)|Chapter 3(18)|Chapter 2(19)|Chapter 1(8)|まえがき他(1+6)
グラッドウェル『天才!』(全99回)
エピローグ他(6+1)|第九章(3)|第八章(10)|第七章(13)|第六章(7)|第五章(13)|第四章(10)|第三章(4)|第二章(10)|第一章(19)|プロローグ他(1+2)
ライダー/サピーロ『人生に必要な荷物 いらない荷物』(全99回)
エピローグ(11)|第七章(10)|第六章(10)|第五章(9)|第四章(20)|第三章(10)|第二章(8)|第一章(16)|プロローグ他(1+1+3)
クリステンセン『明日は誰のものか』
第1章(16)|用語集(4)|序章(18)|謝辞(8)
ワインバーグ『コンサルタントの秘密』(全90回)
§11-14(20)|§7-10(39)|§4-6(21)|§1-3(10)
マッカーサー「老兵は死なず」(全20回)
学生のためのベンチャー指南(全10回)
オープンソースのライセンスは時代遅れだ(全8回)
画面解像度とページレイアウト(全4回)
プロジェクト計画策定(全3回)
ユーザテストはエンターテイメントではない(全5回)
やさしい機能仕様 パート1(全8回)
ARCHIVES
RECENT COMMENT
  • ワインバーグ『コンサルタントの秘密』§1-3--(その9)
    KAZ (02/15)
  • ワインバーグ『コンサルタントの秘密』§1-3--(その1)
    (05/10)
  • 大韓航空801便―『天才!』第7章(その1)
    永江聡 (04/26)
  • イディオムの幻影―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その15)
    やしろ (04/25)
  • イディオムの幻影―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その15)
    あしるぎ (04/25)
  • トイレにスーパーマン―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その12)
    やしろ (04/24)
  • トイレにスーパーマン―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その12)
    あしるぎ (04/24)
  • eventually はcall にかかる―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その10)
    やしろ (04/23)
  • eventually はcall にかかる―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 2(その10)
    あしるぎ (04/23)
  • ワインバーグ『コンサルタントの秘密』§1-3--(その4)
    raycy (03/28)
RECENT TRACKBACK
おことわり
  • トラックバックする際は、送信元に該当記事へのリンクを置いてください。
SELECTED ENTRIES
LINKS
RECOMMEND
RECOMMEND
RECOMMEND
コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学
コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学 (JUGEMレビュー »)
ジェラルド・M・ワインバーグ,G.M.ワインバーグ
モバイル
qrcode