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オープンソースのライセンスは時代遅れだ--(その1)

「個人修練として」コラムを翻訳している方のページからです。修練に少々、お付き合いすることにしました。


先週の OSCON で、私は「オープンソースのライセンスは時代遅れだ」という論議を呼ぶステートメントを行った。


OSCON というのは、Open Source CONvention のことです。オープンソースをテーマとした展示やら討論やら、もろもろの催し物がある集会なのでしょう。原文と読み比べていきます。


Last week at OSCON, I made the seemingly controversial statement "Open Source Licenses Are Obsolete.


副詞seemingly が訳文から抜けています。文意を左右する大事な一語だと思いますので、盛り込みたいですね。


ところで、英英辞典を引くと英和辞典よりも突っ込んだ説明があって、単語の持つニュアンスを深く理解できることがあります。私の場合、今回引用した文章でのseemingly controversial がそうでした。個々の単語を引いて確認しましょう。


    seemingly の英和・英英辞典の記述比較です。
  • うわべは,表面上(は),外観上(は),みたところでは、(リーダーズ)
  • 本当のように見えるが実際にはそうでないかもしれないように(in a way that appears to be true but may in fact not be)(OALD)
  • 本当のように思えて「実際にはそうでないかもしれない」という点が、ポイントです。

    続いて、controversial の英和・英英辞典の記述比較です。
  • 論争(上)の;論議の的となる,問題[異論]の多い;論争好きな.(リーダーズ)
  • 激しい議論や見解の不一致を多々引き起こすような(causing a lot of angry public discussion and disagreement)(OALD)
  • 意見の一致をみない(disagreement) ところがポイントで、しかもけっこう強いニュアンスの表現だというのが感じられます。

元の名詞形であるcontroversy だと、このニュアンスがより明らかです。

    controversy
  • 《特に 紙上での長引いた》論争,論議,論戦;口論(リーダーズ)
  • 多くの人にはまったく同意、支持されない、あるいは動揺を与えるような何かに対する、人々の間での議論、論争(public discussion and argument about something that many people strongly disagree about, disapprove of, or are shocked by)(OALD)

seemingly controversial statement のところを分析すると、
seemingly (副) ―修飾→ cotroversial (形) ―修飾→ statement (名) こんな構造です。英単語のままで日本語の助詞をつければ、「seemingly にはcontroversial なstatement 」ということです。


ここでの文脈に引き寄せて説明するなら、controversial は、「オープンソース」はどちらかと言えば先進的な理念だろうに、それを「時代遅れ」とは何を言い出すんだ、といった疑いの念を持たれるような性質を表し、seemingly には、「時代遅れ」と言われるとにわかに肯定しがたいかもしれないが、実際のところ議論の余地もなく「時代遅れ」ですよ、まあ聞いてくださいよ。というニュアンスが込められているように見えます。


最後にstatement です。convention でのstatement ですから、情景としては恐らくこういう感じ(外務省:麻生外務大臣ステートメント) でしょう。好みの問題もありますが、これを「ステートメントを行った」というのは日本語として少々ぎこちないように思います。


原文から離れすぎない範囲で以上の趣旨を伝えたい。というところで、2つの文章に割って表してみました。大して伝え切れていない気もしますが。



先週のOSCON で、私は「オープンソースのライセンスは時代遅れだ」と意見を述べた。耳にした人が反発を覚えそうな意見である。



少々大げさに言うなら、the seemingly controversial statement という言い回しには、謙遜しているようでいて、裏に筆者の自信が透けて見えています。さらに、文頭から定冠詞のthe を使っている点も、「読者諸賢も既にご存知でしょうが」的なニュアンスが入っているようにも受け取れます。としてみると、けっこう高飛車な態度ですね。



日本語版へのリンク 原文へのリンク



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