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英語から日本語への誤訳あれこれ 「人の訳見てわが訳直せ」
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プロジェクト計画策定--(その1)

以前、CMMIの講習を受けたことがあります。CMMIとは何かを簡単に言うと、結果を生むプロセスに注目して組織の生産性や収益性を高めようという、アメリカ製のモデルです。700ページ以上からなるモデル文書が、英文、日本語訳ともにWebで公開されています。なお2006年10月現在、英文でのモデル文書の最新版はバージョン1.2ですが、これはバージョン1.1での話です。


さてその日本語版テキストの「プロジェクト計画策定(project planning)」に、こういう文章がありました。



SP 3.2 作業レベルと資源レベルの過不足を解消する


蛇足ですが"SP"というのは、実施項目の整理番号みたいなものです。本題に戻りますと、「『過不足を解消する』とあるが、過不足がなかったらどうするのか?」と、受講していた人から質問が出ました。アメリカ人講師の説明を聞いていると(通訳付きでした。念のため)、活動内容は何となく理解できるのですがどうもその内容が「解消する」に合わない気がしてなりません。そこで、参考に配付されていた原文冊子を参照すると、こう書いてありました。


SP 3.2 Reconcile Work And Resource Level


使われている動詞が"reconcile"です。辞書を引くと「調和を保つ」「折り合いをつける」というニュアンスです。シソーラス(類語辞典)には、make compatible, harmonize, balance といった語句が並んでいます。つまりここの文脈に沿って言うと、過不足がなければないで問題ありませんが、ともかく一度は両方を引き比べることが大事なわけです。別の言い方をすると、reconcile の一語には「照らし合わせて状態を監視する」「不都合が生じたときは解消する」、2種類の活動が含まれるのです。


一方日本語の「解消する」に、上記前半の意味はありません。「婚約」「ストレス」「お肌のトラブル」…何でもいいのですが、何かを解消するときはその対象が既に存在することが前提でしょう。あるかないか分からないときに、「解消する」は使わないように思います。


少々くどいですが、私ならこのようにします。



作業と人的物的資源とのレベルを比較照合し、過不足のあるところを解消する。



文脈に合わせようとするとなかなかすきっとした日本語に移しにくい言葉ですし、訳語を決める際に議論も十分重ねたのではと推察しますが、reconcile はモデル文書の全文を検索してもこの節にしか登場しませんから、元の言葉の持つニュアンスを訳にも保持させるのを優先させてはどうかと思うのです。



日本語版へのリンク(PDFダウンロードページ) 原文へのリンク(ダウンロードページ)



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