英日 誤訳どんぶり

英語から日本語への誤訳あれこれ 「人の訳見てわが訳直せ」
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based out of のベースはどこ?

私が誤訳しかけた事例です。都合により文言は適宜変えています。


ある企業の紹介にこんな文句がありました。(下線はやしろ)

About 70% of employees are based out of offices in Singapore.

はじめは、こう読んでいました。

× 従業員のおよそ70%が、シンガポール以外のオフィスを拠点とする。

「シンガポールの外に基盤がある」という読み方です。しかし前後を読むと、どうもこの企業の本拠地はシンガポールらしいので、話に筋が通りません。


よくよく確かめると、実際にはこのような意味でした。


従業員のおよそ70%が、シンガポールのオフィスを拠点として活動している。


based out of には「拠点はシンガポールオフィスなのだが、仕事の大半は他の場所でする」という含みがあるようです。「他の場所で」とまで明言できていませんが、動的なイメージのする訳し方にしてみました。



■ネイティブにも引っかかる(らしい)based out of

Google で"based out of" をフレーズ検索してみますと、forum.wordreference.com での議論がいくつかヒットしました。一番分かりやすかった説明を引用します。


The 7th Fleet is based in Yokosuka ~ the Fleet has a main naval base which is in Yokosuka.
The 7th Fleet is based out of Yokosuka ~ same as above, but also used because the Fleet operates all over the Pacific, running operations out of (or "from", but "out of" is a common way of putting it) Yokosuka.
(「第7艦隊は横須賀を拠点とする」―その艦隊は、横須賀に本拠となる海軍基地がある。
「第7艦隊は横須賀を拠点として活動する」―上と同様だが、艦隊は横須賀から出て("from" も使うがこの意味では"out of" が一般的な用法)作戦を実行し、太平洋全体で活動するので、この表現も使われる。)(forum.wordreference.com より)


ネイティブスピーカーにとってもbased out of というのは新しい表現のようです。コロラドに住むというテクニカルライターの方の、2008年12月付けのブログ記事にはこうありました。


I think this is a relatively new usage. At least, I don't remember hearing it until just a few years ago.
(これは比較的新しい用法だと思う。少なくとも数年前までは聞いた覚えがない。)
(eyeblister.blogspot.com より)


読めるようにしておく必要はあると思いますが、日本人ふぜいが粋がって使うのは時期尚早なのだろうなと理解しました。


| ひやりはっと | 10:45 | comments(0) | trackbacks(0) |
パリ,テキサス

「パリ,テキサス」(ヴィム・ヴェンダース, 1984)は、私の好きな映画の1つです。ときどき見たくなるのでDVD を持っています。


パリ、テキサス デジタルニューマスター版 [DVD]

スライドギターのテーマ音楽もいい感じです。共感覚は持ち合わせていませんけれども、画面と音とのイメージが綺麗に一致しているように感じます。



タイトルに「…,テキサス」とあるように、この映画での「パリ」は、パリはパリでもアメリカ・テキサス州にある街のことです。ちなみにwww.city-data.com によれば、パリの2008年現在の人口は26,000人余だそうです。『天才!』のプロローグに登場したロゼトと同じように、移民が作った街なのでしょう。アメリカは移民の国なので、他にもこういった街が多くあるようです。



以前、とあるニュースリリースを読んでいたら、 …in Warsaw とあったので、はじめ
×(ポーランドの)ワルシャワ
としていました。


けれども、前後と話が合いません。終始アメリカのことしか出てきませんし、金額の単位もドルです。よくよく確かめてみると、
○インディアナ州のワルソー
のことでした。



つづりは同じでも英語だと読み方が変わることもあります。英語圏出身のある人が昔、Zurich は「チューリヒ」と読んじゃダメで、「ずりく」じゃないと英語では通じないよと力説していたのを覚えています。それを聞いて、あんたらが訛っとんねやないか、と思いましたが。

| ひやりはっと | 23:08 | comments(0) | trackbacks(0) |
on a fixed schedule ≠ 修正したスケジュールに関して

久しぶりの「ひやりはっと」カテゴリです。私が誤訳しかけた事例を書きます。


プロジェクトマネジメントに関する文書からです。都合により内容は適宜変えています。


You should state all remaining issues on a fixed schedule.

これをはじめ、こうしていました。


× 修正したスケジュールに関して、残っている問題を全部記録すること。


でも何となく変です。2つの方面で不審な点がありました。


まず背景知識的な観点。そもそもスケジュールを変更せざるを得ない場合、プロジェクトマネジメントの世界では変更管理委員会の承認を得るなど、それ相応の手続きが必要だとされています。なのにいきなり「修正スケジュール」が出てきた印象があって、ちょっと腑に落ちませんでした。


英語的な観点。「修正したスケジュール」の意味なら、on the fixed schedule と定冠詞の方がよさそうです。どれを指すか特定できますし、共通認識もできているでしょうから。けれども実際の文ではon a fixed schedule と不定冠詞なので、「それ」ではないということです。



正しくはこういう意味でした。


残っている問題を全部、決まったスケジュールで定期的に記録すること。



第2章(その1)でのon the fly といい、on の読み方は難しいです。この例ではfixed が多義的な単語であることもあいまって、なおさらでした。注意してかからないと簡単に間違えてしまいます。


| ひやりはっと | 06:14 | comments(0) | trackbacks(0) |
思い込みは誤訳のはじまり

久しぶりの更新です。翻訳の仕事が続けてくるようになり、そこそこ忙しくしていました。ところどころ的外れなことも書いているはずですから、このブログのせいでもないでしょうけれども。


ということで私の誤訳例です。都合により内容は適宜変えています。



Mr. Sato says if Japanese Government does not permit to raise up the number of foreign workers to bring in, we will have to hire more people overseas.


これを最初、こう訳していました。


佐藤氏は「外国人労働者受け入れ人数枠の増加を日本政府が認めないならば、弊社は海外からの雇用をさらに増やさなければならなくなる」と述べる。

ただしつじつまが合わないので、「因果関係が逆じゃないか」とコメントを付けました。


しかし、この文はこういう意味なのでした。


佐藤氏は「外国人労働者受け入れ人数枠の増加を日本政府が認めないならば、弊社は海外での現地採用をさらに増やさなければならなくなる」と述べる。


おかしかったのは原文の因果関係ではなく、私の読み方だったという一席でした。海外からの受け入れの話題だったため、自分の思考のベクトルも無意識のうちに外→内に固定されてしまったのでしょう。思い込みは恐いです。


| ひやりはっと | 08:12 | comments(0) | trackbacks(0) |
X to Y communication

私が危うく誤訳しかけた事例です。都合により、具体的な内容は適宜置き換えています。



use an X to Y communication


はじめはこれを、こう訳していました。


Y 通信のためにX を使用する


to +不定詞という解釈です。であればY は動詞の原形、ということになりますが、しかし、Y は名詞でした。確認のために辞書を引いても名詞以外の品詞や用例は載っていません。それでもなお、英語も「お茶する」みたいに名詞を動詞風に使えるのかも…などと不埒にも思ってしまいましたが、素直に考え直して、自分が間違っていることに気がつきました。


to を不定詞として訳してしまったのですが、後に名詞が続くということは、普通の(?)前置詞と考えるのが妥当です。よって、正しくはこういう意味でした。



X から Y への通信を使用する



実際にはもう少し専門用語風に表現しましたが。ともかくここでは、「X to Y communication」全体で、use の目的語なのでした。「B to B」とか「B to C」とかいう言い方がありますが、それと同じ用法ですね。


| ひやりはっと | 23:33 | comments(0) | trackbacks(0) |
新カテゴリ「ひやりはっと」:that other X do not

ブログのトップに「人の訳見てわが訳直せ」を掲げているのにもかかわらず、これまで人の訳を見てばかりでした。これからは、自分が危うく誤訳しかけて「ひやり」「はっと」した事例を、ときどき書くことにします。実際、昔から「1つの重大な誤訳の背後には300件の“ひやりはっと”がある」とも「台所で誤訳を1匹見つけたら数10匹が隠れていると思え」ともいいます。どちらも今私が作りました。



私が危うく誤訳しかけた事例です。都合により、具体的な文の内容は適宜置き換えています。



Some Xs have Y that other Xs do not.


はじめはこれを、こう訳していました。


Y のあるX もあれば、ないものもある。


ただし、文脈の中に置くとずいぶん唐突な感じがしました。まるで「いいものもあれば、悪いものもある」と音楽シーンを語っているかのようです。なぜわざわざそんなことを言うのだろう、言明として無意味だよなー。そんな疑問を持って読み直すと、自分が間違っていることに気がつきました。


つい接続詞的に訳してしまったのですが、この文でのthat はY を先行詞に持つ関係代名詞ですから、正しくはこうですね。



X の中には他のX が持たないY を持つものがある。


| ひやりはっと | 07:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
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