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英語から日本語への誤訳あれこれ 「人の訳見てわが訳直せ」
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最後に―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 9(その7:End)

「最後に」からです。(下線はやしろ)


 この著書で私が言おうとしたことは、「支援」として変化したさまざまな社会的プロセスを見直すことである。 (p.250)
What I have tried to do in this short book is to reframe many social processes as variations of "helping." (p.157)

variations もas の後ろにあるので、「支援のパリエーションとして」ですね。前もto say でなくto do なので、合わせてこうしました。


 この小著で私が試みたのは、さまざまな社会的プロセスを「支援」のバリエーションとして見直すことである。



このちんけなブログで私が試みたのは、せっかくの良書の値打ちを下げているおかしな翻訳を見直すことでした。


出典


日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則
人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 
原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help
Helping: How to Offer, Give, and Receive Help
(翻訳 金井真弓 監訳 金井壽宏 |原文 Edgar H.Schein)


| 原文解釈の誤り | 00:10 | comments(0) | trackbacks(0) |
支援を受ける用意―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 9(その2)

「支援を受ける用意」からです。(下線はやしろ)


 支援しようとした誰かから、思いがけず助言されたり、自分が行っている何らかの仕事に介入されたりすることは予測できない。 (pp.233-234)
We cannot foresee when someone, in order to help, will unexpectedly provide a piece of advice or intervene in some task that we are performing, … (p.146)

挿入句の位置から考えれば、help するのはsomeone の方でしょうね。そもそもここの主題は支援を「受ける用意」なのですから、支援する側の目線で話が進むのは変だなと感じるべきです。


こうしました。


われわれはいつ、誰かが思いがけず、支援をしようとして助言してくるか、あるいは、自分が行っている何らかの仕事に介入してくるかは予測ができない。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)


| 原文解釈の誤り | 09:00 | comments(0) | trackbacks(0) |
支援を与える用意―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 9(その1)

Chapter 9「支援関係における7つの原則とコツ」に入ります。原書でのタイトルは「Principles and Tips」です。本書の最後の章です。


「支援を与える用意」から4つです。(下線はやしろ)


1つめです。


現在の状況が急に支援を必要とするものになったり、少なくとも支援を選択肢に入れなければならなくなったりしたとき、支援を受けたり提供したりする準備をしておくのは、社会教育の一部なのだ。 (p.231)
It is part of our social training to be prepared to help and to offer help when the ongoing situation suddenly makes helping an imperative or at least an option. (p.145)

「支援を行う準備をしておき、申し出ることは」ぐらいですね。to+不定詞の区切りはこうでしょう。
It is … training
(1)to be prepared to help
and
(2)to offer help
when …


そもそも、ここの主題は支援を「与える用意」なのですから、少なくとも「受けたり」となるのはおかしいです。



2つめです。


人の役に立ちたいと思えば、心の中に葛藤が生じるに違いないし、支援しないという選択をする場合もあるかもしれない。 (p.232)
If we want to be helpful we must be aware of the internal conflicts that may arise, and that sometimes we may choose not to help. (p.145)

must は命令の意味、may は許可の意味に取る方がいいと思います。


後半ですが、that が付いていますので、これもbe aware の内容です。


こうしました。


人の役に立ちたいと思えば、心の中に生じる葛藤を意識しなければならず、また、時には支援しないという選択をしてもいいことを知っておかなければならない。



3つめです。車を運転しているとき、こちらの車線に入りたい車があるときの態度からです。


二 私の前の車との距離を詰めて、その車が入れる余地をなくす (p.232)
2) choose not to create space by keeping close to the car in front of me, … (pp.145-146)

性格の悪い方へレベルアップしていますが、訳者の方の運転が反映されているのでしょうか。本当は、こうですね。


二 私の前の車との距離を詰めたまま、その車が入るスペースを作らないことにする



4つめです。


 ホームレスやさまざまな種類の寄付依頼者に関しても、同様の選択が行われている。私は何かを与えてもいいし、話には耳を傾けても何も与えないことにしてもいい。 (p.233)

「行われている。」までの原文です。


A similar set of choices exists with respect to beggars and solicitors of various sorts. (p.146)

訳語がどちらもいまいちです。beggar は「乞食」を避けて「ホームレス」としたのかもしれませんが、両者は別のものです。個人的な経験を言っても、beggar であるホームレスを見たことはありません。もう少しソフトにして「物乞い」とします。


solicitor も、「One that solicits, especially one that seeks trade or contributions.(solicit する人。特に、取引や寄付を求める人。)」(American Heritage)ですし、「さまざまな種類の」ともなっていますから、特に寄付と限定しなくていいように思います。「勧誘者」ぐらいでしょうか。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)


| 原文解釈の誤り | 08:26 | comments(0) | trackbacks(0) |
代名詞が読めない―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その16)

引き続き章末の「まとめ」から、2つです。(下線はやしろ)


1つめです。


さらにリーダーは、自分たちが組織の一部であること、組織内のどんな変化もそれ自体が変革を伴うことを避けられないと理解すべきだ。 (p.228)
Leaders must also understand that they are part of the organization, and that any changes in the organization will inevitably involve changes in themselves. (p.143)

問題は2点あります。まず、and は絞り込みの意味に取る方が論理が綺麗な気がします。並列でもいいのですが、だとすれば、元の訳は「や」の後ろに呼応する表現がなくて日本語として収まりの悪い文になっているのが問題です。並列にするなら「〜と〜とを」のように、understand that の内容が2つあることが分かるような訳し方のほうがいいかと思います。


そしてもっと大きな問題ですが、元の訳はthemselves をchanges の置き換えと読んでいます。そのため話に筋が通っていません。ここのthemselves はleaders のことです。


こうしました。


さらにリーダーは、自分たちが組織の一部であるゆえに、組織内のどのような変化も必然的に自分自身の変化を伴うことになるのを理解しなければならない。


「リーダーは組織の一部である」→「組織が変化する」→「必然的にリーダーも変化する」という論法です。



2つめです。上のすぐ後ろの文です。


その意味で、変革への取り組みの声をあげた人と同様に、リーダーもまたクライアントなのである。 (p.228)

In that sense they are clients as well as initiators of the change effort. (p.143)

そう読みたいなら、initiators 句の最後、すなわちピリオドの直前にもare が付いていなければいけません。でも、そうはなっていませんね。


clients もinitiators もどちらもthey の補語です。つまり、どちらもthey=リーダーたちのことです。よって、正しくはこうです。


その意味で、リーダーは変革への火付け役であると同時に、クライアントでもあるのだ。



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| 原文解釈の誤り | 06:27 | comments(0) | trackbacks(0) |
変革における支援―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その12)

同じく「『変革』における支援の役割とは?」からです。少し前から引用します。(下線はやしろ)


しかし、変化が本当に必要だという認識に基づいて、ひとたび動機づけが生じれば、それは学習プロセスになる。そのおかげで、支援を求めることは必要な変革だと、的確に考えられるようになるのだ。 (p.224)

「そのおかげで」以降の原文です。


…, which can appropriately be thought of as being helped to make the necessary changes. (p.140)

think of A as B で「A をB と考える[見なす]」(英辞郎)です。元の訳は「支援を求めることは…」とas 以降、つまりB に相当する部分からA を引っ張り出しているところが誤りです。受け身の構文なので、ここでA に相当するのは関係代名詞のwhich です。


後ろの文をこう直しました。


必要な変化を起こすために支援を受けていると、的確に考えることができるのだ。


で、何をそのように考えているかというと、原文の引用範囲外になりますが、「学習プロセス(a learning process)」、意味のつながりから補えば「学習プロセスになりうる、『解凍』と呼ばれる強制的なプロセス」です。

日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)


| 原文解釈の誤り | 07:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
いろいろ―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その10)

引き続き「事例8−1 CEOがコンサルティングを求めるとき――リーダーの支援モデル」から、いろいろと3つです。(下線はやしろ)


1つめです。


 残念ながら、私が会ってきたCEOの大半にとって、支援はまず他人を強制するものとして定義されてしまっている。 (p.221)
Unfortunately, I have met many CEOs who initially define help as fixing someone else. (p.137)

翻訳の問題じゃない気もしますが、たぶん「矯正」としたかったのでしょうね。



2つめです。


彼らは大半の組織が強く相互依存しているという事実を理解せず、さまざまな支援関係を作ることだけが、組織のパフォーマンスを向上させるということも理解しない。 (p.221)
They do not understand that in most organizations the level of interdependency is high, and that only by creating multiple helping relationships can they improve organizational performance. (p.138)

意味が変わっています。2つめのthat 節内の倒置を通常の語順にすると、
they can improve … only by creating ….
ですから、正しくはこうですね。


ざまざまな支援関係を作ることだけで、組織のパフォーマンスを向上させられることも理解しない。


もっと大層なやり方なら他にもあるだろうけれども、というのが隠されている意味です。たとえるなら「ボクなんかこれだけですよ」と手帳1冊で仕事をする竹村健一のようなものでしょうか(古すぎ)。



3つめです。セクションの最後の文です。


そうした変化を実行に移す中で従業員たちが望みどおりに変われるように、リーダーは支援のモデルについてもう一度考えねばならない。 (p.221)
In the implementation of those changes leaders again have to consider the helping model to ensure that the employees are enabled to make the desired changes. (p.138)

「望みどおりの変化を起こせるように」ですね。enabled to make ですから、従業員が変わるのではなくて、従業員が何かを変えるという関係です。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)


| 原文解釈の誤り | 06:02 | comments(0) | trackbacks(0) |
相手方です―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その9)

「事例8−1 CEOがコンサルティングを求めるとき――リーダーの支援モデル」の、前回に続く文からです。連続する文章を3つに分けて進めます。(下線はやしろ)


1つめです。


 こうしたプロセスが展開されるうちに、部長と従業員の一部との関係は発展していき、CEOとグループの距離が近くなる。 (p.220)
As the above process unfold, relationships with the department head and some employees will develop that allow the CEO greater access to the group, … (p.137)

「部長⇔従業員の関係」と誤読される恐れもあるので、「部長や従業員との関係」とした方がいいと思います。反対側は明示されていませんが、ここでは当然CEO ですね。



2つめです。


それによってCEOはさらに観察したり、コミュニケーションをとったりしやすい対象となるだけでなく、いっそう完璧さを失った身近な存在となるのだ。 (pp.220-221)
…, which will provide opportunities to observe and communicate as well as becoming more vulnerable and available. (p.137)

引用部を分けてしまいましたが、この節の先行詞は直前のthe group です。ですからprovide やbecoming はすべて先行詞the group の動作・状態です。元の訳はそこを完全に取り違えています。


CEO 中心のままいくなら、こんなところでしょうか。


CEOはグループとより打ち解けて接しやすくなり、観察しコミュニケーションを取る機会も得られるだろう。



3つめです。


それからCEOは矯正措置を開始する上で受け入れがたい作業プロセスやプラクティカル・ドリフトが、前よりもいい状況にあることに気づく。 (p.221)
The CEO who then discovers unacceptable work processes or practical drifts is in a better position to launch corrective measures. (p.137)

関係代名詞のwho を読み飛ばして構文を見失い、意味不明な訳になっています。この文の主述は下線を付けたThe CEO is in a better position. です。だからこうですね。


そこで受け入れがたい作業プロセスやプラクティカル・ドリフトに気づいたCEOは、矯正措置をより開始しやすい立場にいるのである。


現場との関係が密になって実状を知る機会も生まれればそういうこともやりやすくなる、という話ですね。



■まとめ

元の訳を再掲します。


 こうしたプロセスが展開されるうちに、部長と従業員の一部との関係は発展していき、CEOとグループの距離が近くなる。それによってCEOはさらに観察したり、コミュニケーションをとったりしやすい対象となるだけでなく、いっそう完璧さを失った身近な存在となるのだ。それからCEOは矯正措置を開始する上で受け入れがたい作業プロセスやプラクティカル・ドリフトが、前よりもいい状況にあることに気づく。 (pp.220-221)

直した訳をつなげて再掲します。


 こうしたプロセスが展開されるうちに、部長や従業員との関係は発展していき、CEOとグループの距離が近くなる。CEOはグループとより打ち解けて接しやすくなり、観察しコミュニケーションを取る機会も得られるだろう。そこで受け入れがたい作業プロセスやプラクティカル・ドリフトに気づいたCEOは、矯正措置をより開始しやすい立場にいるのである。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)


| 原文解釈の誤り | 06:41 | comments(0) | trackbacks(0) |
リーダーの支援モデル―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その8)

引き続き「事例8−1 CEOがコンサルティングを求めるとき――リーダーの支援モデル」からです。(下線はやしろ)


部署が自分で困難を乗り切れるようなプロセスをCEOが始めるおかげで、メンバーたちは一段低い位置[ワン・ダウン]に置かれるという不快な状況を避けられる。まず報告書を見たCEOが事実上、「これはきみたちの問題だ」と言ったようなものだからだ。 (p.220)
The CEO has begun a process that permits the department to help itself, which avoids the uncomfortable situation of department members being put in the one down position by the CEO looking at the report first and in effect saying, "These are your problems." (p.137)

原文と見比べると、論理が少しねじれているように感じます。


which 節を直訳すると「looking and saying するCEO によってput される状況を避ける」ですから、「…だからだ」とか勝手な理屈をつけてはいけません。言ったようなものだから避けられるのではありませんし。


述語の現在完了時制(has begun)をどう書き表すかが難しいですが、こうしてみました。


部署が自らを支援できるようなプロセスをCEOが回し始めたことで、メンバーたちは、「これは君らの問題だろ」とばかりにまず報告書に目をやるCEOのせいで一段低い位置[ワン・ダウン]に置かれる、といった不快な状況に陥らずに済む。



現実には(厳密に言えば、シャイン氏が提唱している支援の形では)、自分たちのレベルで解決できることはいちいち組織上層部に報告しない → そのレベルならCEO も報告を受けないしいちいち関知しないので知らない のでそういう目に遭わないという話です。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)



| 原文解釈の誤り | 07:09 | comments(0) | trackbacks(0) |
どういうプロセスか―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その7)

引き続き「事例8−1 CEOがコンサルティングを求めるとき――リーダーの支援モデル」からです。(下線はやしろ)


部署の全グループがまずデータを手に入れ、それを整理し、その後、関連のある内容のものを部長に渡す。部長はその段階で同様のプロセスを経て、適切なものは何か、CEOに渡すべきものは何かを決定するのだ。 (p.220)
Instead, every group in the department gets its own data first, processes it, and then passes the relevant items to the department head, who then goes through a similar process of deciding what can be fixed at that level, and what needs to be passed up to the CEO. (p.137)

at that level とは「部長レベル」を指します。つまり組織階層のレベルのことです。


どういうプロセスを経てこんな訳になったか推測しかねるので、ともかく全体をこうしました。


その代わり、部署の全グループが自分たちのデータを最初に入手し、それを整理し、しかるべき項目を部長に上げる。そして部長は同様に、部のレベルで改善できることは何か、CEOに渡すべきものは何かを決定するプロセスを進める。



「エスカレーション」というやつですね。その用語を知らなくても、たいていの組織ではこういうことをやっていると思います。



日本語訳:人を助けるとはどういうことか 本当の「協力関係」をつくる7つの原則 原文:Helping: How to Offer, Give, and Receive Help (Amazon.co.jp)


| 原文解釈の誤り | 05:56 | comments(0) | trackbacks(0) |
違いすぎる―『人を助けるとはどういうことか』Chapter 8(その5)

「事例8−1 CEOがコンサルティングを求めるとき――リーダーの支援モデル」から、読み違いが積み重なって原文の意味と全然離れてしまった段落を取り上げます。3つに分けて進めます。(下線はやしろ)


1つめです。


 仮に、全体的な効果をあげるために、部署のメンバー同士が互いに支援するプロセスを作ることが目標だとしよう。そうすれば、面接を始める前にさらに考えておくべき問題は、影響を与えられるような方法で情報を明るみに出したり、フィードバックを与えたりするにはどうしたらいいかということだ。 (p.219)

「そうすれば」以降の原文です。


…, further issue that should be considered before the interviews are launched is how to surface information and provide feedback in such a way that it can be acted upon. (p.136)

act upon で「〈人が〉〈忠告・主義など〉に従って行動する」(ジーニアス英和辞典)なので、これをいただいて「それに従って行動できる」と、もう少し強い言い回しにした方がいいかと思います。



2つめです。その続きです。


データをすべて集め、それを要約し、要約したその報告書を部長やCEOに提出するだけでは、それまで認識された問題を改善する行動を始めるのに効果的な方法とは言えない。 (p.219)
Collecting all the data, summarizing it, and giving summary reports to the department head the CEO is not an effective way to launch remedial activity around the problem that have been identified. (p.136)

原文に「だけ」という意味はありません。「…するのは」とします。


「だけ」が誤っている理由は、方向性としては正しい、という意味に、つまり、「それに何かを上積みすれば効果的になる」という意味になってしまうからです。原文は単純なS is not C. の否定文ですから、端的にそれは効果的な方法ではないと言っているのです。



3つめです。その続きです。


メンバー同士が支援し合うやり方なら、部長やCEOはまとめ役を演じることになる。認識された問題の多くはグループの部下たちが対処するほうがいい。なぜなら、彼らは自分たちの労働文化で何が成功し、何が成功しないかを知っているからである。 (p.219)
It puts the department head and CEO into the role of fixers, when many of the problems identified can probably be better addressed by the subordinates in the group because they know what will and will not succeed in their work culture. (p.136)

そもそもこの文は、前の文で「効果的な方法ではない」と述べたのを受け、そこをさらに詳しく説明している文なのですが、訳者の方が(前の文も含め)それを読めていないせいでいろいろと取り違えて見失い、訳に嘘が混ざってしまいました。


まず、It は前の文の主語の置き換えです。つまり、Collecting, summarizing, and giving のことです。


次にfixers です。head とCEO の話なので、ついカタカナ語のフィクサー的な訳語にしてしまったのでしょうが、「fix する人」に立ち返って、この文脈にふさわしい意味を選ぶと「直す人」になります。報告書を渡された=次のアクションへのバトンを渡された という意味になる、というのが原文で言っていることです。


あとwhen はここでは逆接の接続詞ですが、そのニュアンスが消えています。


以上をふまえ、こう直しました。


それでは部長とCEOが問題の改善役になってしまう。だが、認識された問題の多くはグループの部下たちのほうが恐らくより適切に対処できるだろう。なぜなら自分たちの職場の文化では何がうまくいき、何がうまくいかないかを分かっているからである。



■まとめ

元の訳を再掲します。


 仮に、全体的な効果をあげるために、部署のメンバー同士が互いに支援するプロセスを作ることが目標だとしよう。そうすれば、面接を始める前にさらに考えておくべき問題は、影響を与えられるような方法で情報を明るみに出したり、フィードバックを与えたりするにはどうしたらいいかということだ。データをすべて集め、それを要約し、要約したその報告書を部長やCEOに提出するだけでは、それまで認識された問題を改善する行動を始めるのに効果的な方法とは言えない。メンバー同士が支援し合うやり方なら、部長やCEOはまとめ役を演じることになる。認識された問題の多くはグループの部下たちが対処するほうがいい。なぜなら、彼らは自分たちの労働文化で何が成功し、何が成功しないかを知っているからである。 (p.219)

修正した訳です。1つめと2つめの範囲での細かい言い回しにも手を入れました。


 仮に、全体的な効果をあげるために、部署のメンバー同士が互いに支援するプロセスを作ることが目標だとすれば、面接を始める前にさらに考えておくべき問題は、それに従って行動できるような方法で情報を明るみに出したり、フィードバックを与えたりするにはどうしたらいいかということだ。データをすべて集め、要約し、その報告書を部長とCEOに提出するのは、認識された問題を改善する行動を始めるには効果的な方法ではない。それでは部長とCEOが問題の改善役になってしまう。だが、認識された問題の多くはグループの部下たちのほうが恐らくより適切に対処できるだろう。なぜなら自分たちの職場の文化では何がうまくいき、何がうまくいかないかを分かっているからである。



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